第3回 もみじ狩り

2009年12月2日

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春の花見と秋のもみじ狩りは昔からつづく長崎の恒例の行事だが、車社会となってからは紅葉見物は遠くまで出かけるようになってしまった。

子供の頃までは弁当をこしらえ家族総出で遠足気分で出かけていたのだが。

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春のカルルス、秋のみょうそうじ、といわれるように長崎人にとってはお馴染みの景勝地である妙相寺界隈は、日見バイパスの開通や本河内高部水源地の改修工事等でずいぶんと様変わりしてしまった。

しかし中に踏み入れると昔ながらの風情が残っており懐かしさと色づいた鮮やかなもみじの変らぬ姿に安堵する。

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寺町にある皓台寺の五世住持「逆流」が末寺とし、彼の書による「瑠璃光山」のアーチ式の石門が出迎えてくれる。秋葉大権現へとつづく野石が積まれた石段の道の脇には不動明王や小さな滝があり深い趣がある。この道は正月行事の七高山巡りで歩く古い山道である。

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もうひとつ長崎では馴染ぶかい鳴滝川の源流にある「七面山」のもみじも美しい。

ここは街から紅葉しているのがはっきりと見える。山奥とはいえ港に向けて開けているので明るく、秋の日に照らされて錦に織りなす様相は実にすばらしい。

紅葉のもみじ越しに見る、鶴の港(長崎港)と遠く女神大橋の眺望よし。

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第2回 くり・かき・まんじゅう

2009年11月7日

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長崎の街に秋が訪れる。 
涼しくなったなあ~としみじみ実感するのが庭見せの夜。
笹がそよそよと風に揺れ、清々しい空気にかすかに酒の香りを感じ、少し肌寒くなった夜風に一枚はおって出かけましょうか。

長崎くんちは10月1日の事始神事から13日の直会(なおらい)まで。一般的に待ちに待った長崎人は3日の夜からくんち気分が高まってくる。そんなくんちの楽しみのひとつ庭見せ飾りの伝統的な風習を紹介します。

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奉納踊りの衣装飾りには、出演者の名を記したまさめの板の席札を置き宗和台に栗と柿と桃饅頭を盛って並べる。今では宗和台を持っている家も少なくなり料亭などよりお借りする事が多い。将来一番の心配のたねが柿である。庭見せに飾る柿はぜったい「島原とんご」でないと様にならない。

食としての需要がほとんどない「島原とんご」は生産する農家にとっても悩みのたねで供給とのバランスがむづかしい。飾った後でおすそわけで貰って頂くとこれがまあ素朴なほっこりした里の秋の懐かしい味がする。

恵比寿や大黒をかたどった「ぬくめ細工」の和菓子も残しておきたい長崎の伝統的な品である。

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一方、傘鉾の飾りは神聖な町の象徴でもあることから、宗和台ではなく、三宝に “こめ・さけ・しお”を配する。

「かわらけ」に米を盛り、「へいじ」に「つの」をつけ、「かわらけ」に塩を盛る。
写真の今籠町の傘鉾飾りは三社紋の化粧垂れで飾りうこんの肩あてを枕に「さお」を置き、「りん」と「一文銭」を並べてある。

長崎くんちの伝統は関わらなければ一生耳にしないような用語や目に触れることのない様式、またしきたりや礼儀が非常に数多く存在する。この中には長崎文化のエッセンスが凝縮されています。機会があれば少しづつ紹介したいとおもいます。

第1回 長崎の晩夏

2009年10月1日

◎ 精進落ち

精進落ち

祇園さんで幕を開けた、まぶしい長崎の夏は盆の精霊流しが終わると急速に色あせてしまう。きびしい暑さだけを残して全てが終わってしまったかのように・・・。そんな頃、市場や八百屋には冬瓜が出回ってくる。精進落ちには「とうが汁」。鶏肉のスープに冬瓜と小葱、ピリッとつぶ胡椒のきいた熱いおつゆに、忍び寄る秋の気配が感じられる。

この料理は卓袱料理の家庭的展開だと思っている。宴もたけなわのころ大鉢に季節の菜を配した鶏のスープが白飯といっしょに出される。小さく切られた具や澄んだスープは家庭のそれより遥かに洗練されてはいるものの基本は同じで長崎ならでは味である。

このスープを蓮華ですくって白飯にかけて食するのを「じゅじゅまま」という。料亭で長崎通を気取ってじゅじゅままするのも一興である。

◎ 場所踏み

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6月1日の小屋入りから稽古を重ね何とか形になってきた頃、諏訪神社や八坂神社の石だたみに初めて足を踏み入れ実践練習を始めることを「場所踏み」という。この頃から踊り町はくんちモードに入ってきて心は秋の本番へと盛り上がる。

しかし世の中は残暑きびしい一番暑い季節。風が凪いでうだるような熱帯夜が続く長崎の街。そんな折、場所踏みから町へ帰る囃子の音が遠く聞こえると、一瞬ふっと秋風が体をなめていったような錯覚と、夏が終わろうとしている寂しさが身をつつむ。

場所踏みも回を重ねる度に夜も長くなり、何気に目の前にある大きな月に気がついたり少しづつ少しづつ秋へとシフトしていくのである。

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