長崎の街に秋が訪れる。
涼しくなったなあ~としみじみ実感するのが庭見せの夜。
笹がそよそよと風に揺れ、清々しい空気にかすかに酒の香りを感じ、少し肌寒くなった夜風に一枚はおって出かけましょうか。
長崎くんちは10月1日の事始神事から13日の直会(なおらい)まで。一般的に待ちに待った長崎人は3日の夜からくんち気分が高まってくる。そんなくんちの楽しみのひとつ庭見せ飾りの伝統的な風習を紹介します。
奉納踊りの衣装飾りには、出演者の名を記したまさめの板の席札を置き宗和台に栗と柿と桃饅頭を盛って並べる。今では宗和台を持っている家も少なくなり料亭などよりお借りする事が多い。将来一番の心配のたねが柿である。庭見せに飾る柿はぜったい「島原とんご」でないと様にならない。
食としての需要がほとんどない「島原とんご」は生産する農家にとっても悩みのたねで供給とのバランスがむづかしい。飾った後でおすそわけで貰って頂くとこれがまあ素朴なほっこりした里の秋の懐かしい味がする。
恵比寿や大黒をかたどった「ぬくめ細工」の和菓子も残しておきたい長崎の伝統的な品である。
一方、傘鉾の飾りは神聖な町の象徴でもあることから、宗和台ではなく、三宝に “こめ・さけ・しお”を配する。
「かわらけ」に米を盛り、「へいじ」に「つの」をつけ、「かわらけ」に塩を盛る。
写真の今籠町の傘鉾飾りは三社紋の化粧垂れで飾りうこんの肩あてを枕に「さお」を置き、「りん」と「一文銭」を並べてある。
長崎くんちの伝統は関わらなければ一生耳にしないような用語や目に触れることのない様式、またしきたりや礼儀が非常に数多く存在する。この中には長崎文化のエッセンスが凝縮されています。機会があれば少しづつ紹介したいとおもいます。